歯科コラム

インプラントの寿命はどれくらい?

インプラント
クリア歯科

歯を失ったときの治療法として、審美性の高いインプラントを選ぶ人が近年増えてきています。

しかし、治療を受けるにあたって気になることの1つとして、インプラントどのくらい持つのかという不安があがります。

ここでは、インプラントの寿命および長持ちさせるための方法についてまとめました。

インプラントの寿命は一般的に10年と言われている

インプラントの寿命に関する一般的な認識としては10年くらいと言われています。

また、10年以上の寿命が9割以上あるという統計もあります。

歯がなくなった場合の治療法としては部分入れ歯やブリッジによる補綴治療が一般的ですが、その寿命はそれぞれ入れ歯が約5年、ブリッジが約8~9年ぐらいといわれており、それらと比べてもインプラントは高寿命な方といえるかもしれません。

ただし、同じ治療法をしていてもやはり寿命には個人差があります。

日常のケアを怠れば早い段階でインプラントが外れてしまいますが、きちんとケアをすれば長く使い続けられる人もいます。

インプラントをできるだけ長く使うためには、インプラントが抜け落ちる原因を理解したうえで正しいケアを続けることが重要だと言えるでしょう。

※監修者コメント※

インプラント治療は、1960年代以降チタンと言われる金属の発見により始まり、現在も続いている治療方法のひとつです。

初期のインプラント治療は、顎の骨にチタン製のネジのようなものを埋め込み、その上に歯を作製するという方法でしたが、以後インプラントは、ブリッジや入れ歯の土台などの用途としても多岐に応用されるようになりました。

これまでは、歯を失った場合の治療方法としては、入れ歯やブリッジなどの治療法が第一選択肢でした。

インプラント治療法が高額である以上、今でもそれは変わりませんが、治療法の選択肢が増えたことで、多種多様な治療が可能となり、現在の歯科治療に幅が生まれました。

インプラントが抜け落ちる原因は通常の歯と変わらない

インプラントは骨の中にあることから天然の歯と同じようなものとよく言われますが、インプラントはチタンまたはチタン合金でできているため、天然の歯のように虫歯になることはありません。

しかし、歯周病になるとインプラントを支えている骨が溶かされてしまうため、徐々にぐらつき始めます。

インプラントは天然の歯と違い、骨にネジを刺しているのと同じ状態です。

そのため、周りの骨が歯周病などで溶けてしまうとインプラントは簡単にぐらつき、最悪のケースとしては脱離していまいます。

またケアを怠ることにより周りに炎症が生じ「インプラント周囲炎」を起こした場合も同様の現象が起きます。

この点において、インプラントと通常の歯に大きな差はありません。

日本人は8割が歯周病または歯周病予備軍だと言われており、歯を失う原因の第1位は歯周病となっています。

インプラントを長持ちさせるためには、日頃から丁寧なケアを行うことが大切です。

※監修者コメント※

インプラントは、インプラント体といわれる顎の骨に植わった部分と、歯の形をした「上部構造体」から構成されています。

インプラント体は顎の骨にねじ込まれていることからかん合力が発生して維持されています。

また、上部構造体は人工物であるため虫歯になりません。

ただしインプラント体は、前述のように周りの骨が何らかの形でなくなると抜け落ちてしまいますし、上部構造体は天然の歯とは異なり、「衝撃」や「硬いもの」によって割れたり壊れたりすることがあります。

インプラントを長持ちさせるために家でできること

インプラントを長持ちさせるためには、日頃のセルフケアが何よりも大切です。

歯磨きが必要なのはもちろんですが、それだけで完全にプラークを落とすことはできず、一般的な歯ブラシで落とせる汚れはわずか6割だと言われています。

そのため、デンタルフロスや歯間ブラシなどのアイテムも併用は必要です。

デンタルフロスで口腔内の衛生、歯間ブラシで歯の間の汚れを丁寧に取り除いていきましょう。

また、歯ブラシの選び方も重要なポイントです。

硬い歯ブラシのほうがプラークを落としやすく歯周病対策に向いていると考えがちですが、硬い歯ブラシでゴシゴシ磨くのは粘着性のプラークを除去するには不向きです。

そのうえ歯茎に傷がつきやすく、口腔内細菌に感染しやすくなるため、かえって口内環境を悪化させてしまう可能性があります。

特に歯を磨く力の強い方は、普通の硬さの歯ブラシを3本の指で固定し、軟らかい力で磨くと良いでしょう。

そして、ヘッドは小さめの歯ブラシを選ぶのがおすすめです。

大きなヘッドの歯ブラシだと奥歯や親知らずにはなかなか届きませんが、ヘッドが小さければ奥までしっかり磨くことができます。

普通の歯ブラシと先が細くなったタフトブラシを併用するのもいいでしょう。

なお、歯磨き粉を歯ブラシ一杯に付けて磨くことはお勧めできません。

たくさんの歯磨き粉をつけるとスッキリした気分になりますが、歯磨き粉が残ってしまう弊害(泡立てた歯磨き粉以外(ペースト)が歯周ポケットの中や隙間、インプラント体の細かい傷に入り込むことで残留する現象をいいます)と歯磨き粉にふくまれる研磨剤が歯を余計に削ってしまう弊害があるといわれています。

そのため、歯磨き粉は少しだけ(一般には歯ブラシの列1~2列ぐらい)つける、あるいはつけないで磨くことが重要といわれます。

このような点に気を付けてプラークコントロールを行えば、歯周病になる確率はぐっと低くなります。

その分だけ、インプラントも長持ちしやすくなると言えるでしょう。

※監修者コメント※

インプラントを長持ちさせるためには、自分自身で行う「自己管理」はとても大事です。

日々のブラッシングや口腔内環境の清潔を保つことは、インプラントを長持ちさせるだけではなく、ひいては成人病の予防や健康保持のためにも重要だといわれています。

病院での定期的なケアは効果的 自分に合った適切な歯ブラシやデンタルフロス、歯間ブラシなどを使ってケアをしていても磨き残しや目に見えない歯の隙間に汚れは溜まっています。

そのような汚れは、自分で取ることが難しいため歯科医院で定期的に健診およびクリーニングを受けることをおすすめします。

食後に作られるプラークは歯磨きで簡単に落とすことができますが、磨き残したプラークは2日ほどで硬い歯石へと変化し歯に付着します。

歯石は歯周病菌にとって格好のすみかであるため、放置しているとどんどん口内環境が悪化してしまいます。

かといって、プラークが歯石に変化した場合、それを歯磨きで落とすことは不可能に近いです。

道具を使い、無理に自力で落とそうとしても、歯石を落としきれないどころか、歯や歯茎に傷を付けてしまう可能性もあります。

歯石に変化したプラークは、歯科のある病院や歯科医院にて歯周病予防のため取り除いてもらいましょう。

なお、歯科医院に通う適切な頻度は人それぞれです。

目安は3か月に1度ですが、歯に汚れが付きやすいタイプの人は1~2か月に1度ほどの頻度で通うと安心です。

※監修者コメント※

インプラントを長持ちさせるためには自分自身で行う「自己管理」はもちろん必要ですが、それ以上に治療を受けた歯科医院でのメンテナンスは「不可欠」です。

定期的なメンテナンスはもちろん、歯磨き指導や歯石の除去などを専門家に任せて口腔内環境を保つことで、より長くインプラントを長持ちさせることが出来ると言えるでしょう。

インプラントを長持ちさせるコツは丁寧なケア インプラントは決して安価な治療ではないため、できるだけ長持ちさせたいものです。

一般的に10年が寿命と言われているインプラントですが、歯のケア次第で10年以上長持ちさせることは十分に可能です。

ぜひこの記事を参考に、今日からでも歯周病対策を始めてみてはいかがでしょうか。

監修者:中村 貢治(歯科医師)

1993年、神奈川歯科大学歯学部大学院歯学研究課程放射線学教室に入局し、1994年アメリカ航空宇宙局(NASA)へ宇宙実験委託を当時の宇宙化学研究所(現JAXA)より受け研究員としてケネディ宇宙センター(KSC)にてスペースシャトル実験に参加、当時の研究結果を以て1997年に歯学博士を取得。また、1995年より1年半アメリカ、Dupont社で開発された新エックス線機器の研究開発部門へ研究員として留学し、1997年4月に神奈川医科大学・放射線学教室へ入局、医局長、講師を経て2009年4月に退局、同年6月に中村歯科医院を開業。現在は歯科医師会役員(学術→医療管理→医療安全対策)、県歯会歯科医部員(医療安全対策部)等々に従事し、歯科医療のみならず医療の社会貢献、普及に努めている。

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